2015年12月31日木曜日

第1回 47「戸建て」市場の売上げ総額

 

 不動産競売は、裁判所の開始決定がなされても、申立ての取下げなどあれば、売却までは進みません。したがって、不動産競売の売却件数は申立て件数と一致するものではありませんが、債権者の申立てがなければ始まらない手続ですから、売却件数は申立て件数次第で増減します。

 不動産競売の申立て件数(マンション等を含む。)は、民事執行法の制定とともに増加し、バブル崩壊後には年間7万件を超えるようになりました。6万5,000件を超えた平成9年ころから平成17年ころまでがピークです。

 しかしながら、平成19年には5万4,920件に減少し、その後も、平成20年、平成21年にそれぞれ約6万7,000件の申立てがあったのを除くと、毎年減少の一途をたどっています。(参照:執行官ミニ歴史(6)「不動産競売の時代」の到来、筆者のホームページ所収の「乖離率で見る不動産競売価格の動き(地裁本庁50庁平成26年版)」

 当ブログでは、このように申立てが減少している不動産競売市場の、平成19年から平成26年まで8年間の動きを振り返ってみたいと思います。但し、分析対象は、地裁本庁37庁、支部10庁、合わせて47の「戸建て」市場に限ります(注1)。予めお断り申し上げます。

 47市場に限定せざるを得ないのは、その他の市場は、BITの開始が遅く、平成19年のデータが存在しないからです(注1)。けれども、47市場というと、数の上では全国1733分の1にも充ちませんが、平成25年、平成26年の実績では、全国の売却件数の約6割、全国の売上額の約7割を占めます。以下はすべて、この47市場の「戸建て」売却実績に基づきます。

(注1)不動産競売事件を取り扱うすべての裁判所173庁がBITに登載されるようになったのは平成24年であり、平成18年時点のBIT登載庁は47庁でした。したがって、47庁以外の市場については、平成19年のBIT公開データは存在しません。


 まず、売却件数(注2)を見てみましょう。47市場の「戸建て」物件の売却件数は次のグラフのとおりです。

(注2)ここでいう「売却件数」は、BITに売却実績として掲載された件数のことです。裁判所の売却許可決定が行われたか否かは未確認の件数です。



 売却件数はこの8年間は、平成21年をピークとして、その後は減少を続けています。平成26年は、平成19年比で4,57335%の減少、平成21年比では1087756%の減少となっています。わずか5年間で半分以下に減少したことになります。


 では、市場の売上げ額はどうなっているでしょうか?

 47市場の売上げ総額(売却価額の総額です。以下、同じ)は次のグラフのとおりです。売却基準価額(以下「基準価額」と言います。)の総額を参考表示いたしました。

 売上げ額が最も多いのは平成21年です。その後は減少し、平成25年は2,000億円を切っています。平成26年は、平成21年に比べると1.457億円48%の減少です。売却件数の減少率56%と比べると少ないものの、5年間で半減した状況であることに変わりはありません。


 各市場の年間売上げの平均額は、中間値(すなわち24番目の市場の額)を採りますと、次のグラフのとおりです。


 47市場の庁名のご紹介も兼ねて、各市場の年間売り上げ額、その8年間平均額(単位:億円)を掲げておきます。次のグラフのとおりです。100億円を超える市場が5市場あります。




 各市場の売上げ総額の年度変化を見てみますと、次のグラフのとおりです。グラフには奇数年のみ4年間を表示しました(本稿のグラフは以下も同様といたします。)。


 なお、このグラフは「対数目盛」を用いています。超多額売上げ市場の高さがわかりにくいかもしれませんが、ご了承ください。ちなみに最も売上げの多い東京地裁本庁の売上げ総額(単位:億円)は次の表のとおりです。





 ほとんどの市場で、平成21年の売上げが最も多く、平成25年が最も少なくなっています。売却額の減少は全国的に生じているようです。

 では、不動産競売「戸建て」市場の活性度は、8年間、どう変化しているでしょうか?当ブログは、いくつかの視点から、これを分析してみたいと考えます。
 つづく(次回は「売上げ乖離率」)  

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