2016年12月25日日曜日



第4回 ゆく川の流れは絶えずして・・・


 平成25年(2013年)を振り返っていますと、つい、方丈記の冒頭を思い浮かべてしまいます。「しかももとの水にあらず」と続きます。

 平成19年(2007年)から平成25年(2013年)に至るまでの47市場の変化を少し細かく振り返ってみましょう。

 第2回でご紹介した「47市場の乖離率」グラフの2つの乖離率が示すとおり、平成20年(2008年)、平成21年(2009年)には乖離率(買受け倍率)は急速に落ち込み(売却件数は多く、売上げ金額も多いので、実感し難いかもしれませんが)、平成22年(2010年)以降はそのどん底からの回復過程にほかなりませんでした。

 8年間の変化としてなによりもまず指摘しなければならないのは「売却件数の減少」です。

 47市場の売却件数は平成21年(2009年)をピークに減少し、平成25年(2013年)は平成19年(2007年)より24%も少なくなっていますが(第1回参照)、売却物件の価格帯にはなにか変化があったでしょうか?


 47市場の売却物件の価格帯別の件数は次のグラフのとおりです。なお、価格帯区分は、第2回で触れたとおり、基準価額により500万円単位で5つに分けています。




 価格帯別の割合グラフにしますと、次のグラフのとおりです。基準価額1,000万円未満(すなわち価格帯ⅠⅡ)は、平成19年(2007年)には66%でしたが、平成20年以降、割合が若干高まっています(最高値は平成22年(2010年)の73%)。
 なお、基準価額1,000万円未満物件を、以下「平常価格物件」、略して「平価物件」と呼びます。これに対して、基準価額1,000万円以上の物件を「高価物件」と呼ぶことといたします。


 価格帯別の売上げ額を見てみますと、次のグラフのとおりです。

 価格帯Ⅴの売上げ額が突出して多い状況は8年間変わりません。件数の多い価格帯が売上げ額は少なく、逆に、件数の少ない価格帯が売上げ額が多い!のが不動産競売戸建て市場の特徴です。(このため、平均乖離率と売上げ乖離率は、それぞれ別の価格帯の活性度を反映することとなり、ときには食い違うことは第3回で見たとおりです。)



 
割合グラフは次のとおりです。



 売却件数は変化していますが、その価格帯構造も、価格帯の売上げ割合も、あまり大きな変化もなく推移しています。


 では、47市場の買受け状況(=活性度)は、価格帯別に見るとどうなっているでしょうか?


 価格帯別の平均中間乖離率(つまり、各市場の価格帯の中間値を単純平均した値)は、次のグラフのように変化しました。データは下表のとおりです。





 この平均中間乖離率グラフを棒グラフにして、平成19年(2007年)から、平成21年(2009年)を経て、平成22年(2010年)にどう変化したかを見てみたのが次のグラフです。(参考のため、前回ご紹介した平成25年(2013年)も掲げました。)



 平成21年(2009年)には、平成19年(2008年)のような活性化状況は全く見られません。翌平成22年(2010年)には状況は大きく変わりましたが、平成19年(2007年)とは比べものになりません。・・・そして平成25年(2013年)を迎えたわけです。


 ところで、以上のような価格帯ごとの乖離率の動きは、基準価額の2倍以上で買われた割合の変化を見てみますと分かりやすいと思います。次のグラフです。

 但し、このグラフは47市場の価格帯全件を対象にした統計であり、47各市場の平均値ではありません。また、2倍以上の買受けが多くても、低い乖離率による買受けも多いと平均乖離率は上昇しないことにもご留意ください(例えば、価格帯Ⅰ)。



 ・・・と、5つの価格帯に分けて、47市場の活性度の変化を見てまいりましたが、8年間の特徴としてまとめるならば、47市場は、平価物件(すなわち、基準価額1,000万円未満=価格帯ⅠⅡ=の物件)と高価物件(すなわち、基準価額1,000万円以上=価格帯Ⅲ以上=の物件)とで対照的な動きを示したと言えるのではないかと思います。

 平価物件と高価物件別に、平均乖離率と売上げ乖離率を見てみましょう。次のグラフのとおりです。
 なお、このグラフの平均乖離率は、前掲「価格帯別平均中間乖離率」表に基づいて、平価物件は価格帯Ⅰと価格帯Ⅱの中間値、高価物件は価格帯Ⅳと価格帯Ⅴの中間値といたしました。売上げ乖離率は、それぞれの47市場合計金額に基づいて算出しました(注1)


(注1)価格帯別に見ると、平均乖離率と売上げ乖離率は、高価物件ほど開き(差)が大きいことに気付かれると思いますが、高さは違うものの形状(動き)はほとんど変わりません。


 第2回で掲げた「47市場の乖離率」グラフは、このような実態から生まれています。(47市場の平均中間乖離率は、平価物件の平均中間乖離率に近い値です。念のため。)


 つづく(次回は「第5回 多額売却市場とその他の市場」)




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